シバタ コウスケ SHIBATA Kousuke
柴田 康介
所属 東京電機大学 工学部 数学系列(工学部)
職種 助教(任期付)
研究期間 2020/04 ~ 2022/03
研究課題 双有理幾何学に現れる特異点の不変量の研究
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 特別研究員奨励費
研究機関 日本大学
科研費研究課題番号 20J00132
代表分担区分 研究代表者
概要 双有理幾何学に現れる特異点は可換環論的にどのような性質を持っているかはほとんど知られていない。今年度は、正標数の双有理幾何学の特異点の有理特異点の環の性質について環の不変量である重複度に注目して研究した。双有理幾何学の特異点である有理特異点はF特異点であるF有理特異点(F-rational)と関係があることがわかっている。2次元のF有理特異点は正標数の有理特異点であると証明されている。しかし、一般的に正標数の有理特異点はF有理特異点とは限らない。そこで、どういった場合に正標数の有理特異点は環としてよりいい性質であるF有理特異点なるのかという問題が考えられる。
渡辺敬一氏は1次元射影空間の豊富なQ因子より定まる次数付き環が標数pの有理特異点であるとき、因子の分母が充分大きければF有理特異点になるのではないかという予想をした。今年度は、この予想を「pが因子の分母を割り切らなければ」という仮定の下でF有理特異点であることを示すことができた。これにより、渡辺敬一氏が考えた予想が正しいことが分かった。
また、環の重複度の小さい環の場合を考えていたところ、次のことが分かった。標数が7以上の2次元次数付き環であり重複度3の有理特異点はF有理特異点である。さらに、この結果を一般化した、与えられた2次元次数付き環が重複度mの有理特異点であるとき、mにしかよらないp(m)が存在して、標数がp(m)以上ならばF有理特異点であることを証明した。そして、重複度が4である次数付き環が有理特異点である場合を分類することでp(4)=11であることも、求めることができた。
そして、有理特異点であるが、F有理特異点でない次数付き環の面白い例を見つけることができた。これによりp(m)が2m-1より大きくなければならないこともわかった。
これらの結果は論文としてまとめ、arXivに投稿し、ジャーナルにも投稿中である。